小説


とかげの月

吉秒匠 Yoshinogi Takumi



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とかげの月 / 写真




更新履歴/ 「徒然」はつれづれに随時更新。


2018/11/22
『写真』








ラムネのビンを割った想い出がない。
ガラス玉を炭酸の圧力で内側から
ガラスビンの口に押しつけて封をする。
それを店頭にある棒で押し開ける。
閉じるため、開けるために、
なにも足さず、なにも引かない。
究極のリサイクル容器。
プラスチックのリサイクルなんて、
集めて溶かしてまた作って。
なんて非効率的。
コーラもビールもシャンパンも、
ぜんぶこのコッドネックボトルに
してしまえばいいのに。
だがしかしそのビンは、
世界から消えつつあるそうだ。
輸送途中に栓が勝手に開く。
そういう問題もあるが、
発展途上国ではさらなる難題。
ガラス玉を取るためにビンを割る。
ガキどもの存在が大きいらしい。
この国だって例に漏れず、
昭和を生きていた者の共通記憶として、
「やったよなあ」
という話をまわりで聞くのだが。
いやまったく。
ラムネを飲んだ記憶はある。
ビンを返していたのだろうか。
返すものなのだから正しい行いだが。
そうすると駄菓子屋などの、
店先でビン一本飲みきっていたことに。
……そんな記憶もない。
家で飲んで酒屋さんが回収?
確かに瓶ビールは配達されていた。
頭のなかを探すが……
ラムネビンと、
我が家の台所が結びつかない。
可能性として。
ときおり銭湯に連れて行かれた。
そこでなら。
飲み、返す。リサイクル。
ありうることのように思う。
だが、なんにせよおぼえていない。
私にとって重要なことではなかった。
祝いの席のシャンパン同様、
シュパンッ、と栓を開ける。
その瞬間だけの飲み物でいいのだ。
と、思い返しながら。
幼い息子のラムネビンに、
冷蔵庫にあった別の炭酸飲料を入れ、
さかさまにして数十秒。
写真では出ている小さな泡も、
やがて消える。
また開けられる状態になる。
新品のように激しい音は出ない。
でもガラス玉が音立てて落ちると、
子供は子供だましに笑う。
昭和より貧乏臭い。
にしても。
ここに生きるリサイクルの極みよ。

















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いま。ここに在る、あなたを愛してる。

でも…………まだ、秘密。

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徒然<白鏡> 徒然<白鏡>



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