小説


とかげの月

吉秒匠 Yoshinogi Takumi



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とかげの月 / 写真




更新履歴/ 「徒然」はつれづれに随時更新。


2017/08/04
『写真』


映画『カーズ』の主役ふたり。
いや、二台か。
特に、左の茶色いの。
メーターという名前。
二歳になる前の息子が、
ママをママと呼ぶよりも早く、
メーターをメーターと呼んだ。
なにがそんなになのか。
それ以来、朝起きると、
これを握りしめ、
寝ている私に知らせにくる。
「メーター!」
「はいはい、メーターな」
「これ。メーター!!」
頬に押しつけてくる。
知っとるっちゅうねん。
分析してみた。
メーターはレッカー車だ。
そういえば工事車両全般を、
男の子は好きなものだ。
うちにもそういう絵本はある。
クレーン車に、目鼻のついた。
だがそのキャラに名前はない。
目鼻のついたクレーン車だ。
深い愛には名前が必須なのかも。
それに、見ていて気づく。
メーターの動きは、速い。
彼を主人公にした、
いくつかの短編があるのだが、
そりゃあもう目まぐるしい。
そして彼はレッカ−車なので、
ワイヤーフックを使いまくる。
故障した仲間を牽引する。
それは当然だが、ときに。
スパイダーマンのように、
なにかに引っかけて、
自分を宙へ飛ばしたりもする。
サーカスするクレーン車だ。
現に息子はメーターが、
なにかを引っぱるという想定で、
延々と遊んでいる。
引っぱっているものを、
吹っ飛ばしたりもする。
ここで写真を見ていただきたい。
トミカのメーターのフックは、
やわらかい樹脂でできている。
息子は手にしたその日に千切った。
誤飲もある年齢なので、
直さずにそのままである。
それから数ヶ月を経て。
いま彼の目には、どう見ても、
ワイヤーフックが見えている。
しかもそこだけ仮想なので、
部屋の端から端までのびたりする。
寝ている私の頬に押しつけ、
私の鼻にフックをかけて引っぱる。
「メーターぁぁぁぁあ!!!」
この時空には存在しないフックだ。
それ引っかけて気合いを入れる。
つきあうか?
つきあいませんよ、私は。
痛くないから怒りもしないし。
やがて彼は、なにかを連れて去る。
メーターの仮想のフックで。
仮想の私を引きずっていったのか。
もういちど寝ることにする。
きっと寝室の隅には、
彼の生み出した別時空の私が、
ズタボロになって山積まれて、
この時空の私を睨んでいる。
おかげで睡眠時間を、
もう少しでも確保できている。
ありがとう、私。






































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いま。ここに在る、あなたを愛してる。

でも…………まだ、秘密。

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徒然<白鏡> 徒然<白鏡>



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